safe in their alabaster chambers  (2016 - 2022)

アラバスターの部屋でやすらかに 朝にも邪魔されず 昼にも邪魔されず 

復活を待つ柔和な人々が眠っている サテンの垂木 石の屋根の下で 

そよ風が光の城の中で軽やかに笑う 蜂が聞えない耳に語りかける 

小鳥たちが無邪気な歌を歌っている 何という知恵がここで消えたことだろう 

上のほうでは歳月が厳かに過ぎゆく 世界は弧を穿ち 蒼穹は回転し 

王冠は落ち 総督たちは降伏する 雪原のしみのように音もなく

Emily Dickinson “ Safe in their alabaster chambers “ ~ (壺齋散人訳)

 

生涯のほとんどをアメリカ・マサチューセッツ州アマーストの自宅で過ごした19世紀の詩人は、アラバスター(雪花石膏)でつくられた部屋を棺墓に例え復活を信じるプロテスタント信仰を題材に制作したと考えられています。私はその詩を読んだとき、大きな水晶の洞窟の中に自分がいるような気がしました。子供の頃から鉱物のごつごつした石の外側とは裏腹に内側のきらきらと光る結晶を見るのが好きでした。割ってみなければその美しさに気づかないように、ひとの内面にも一体どれだけの鉱脈が隠されているのでしょうか。

 

この作品は父がOLYMPUS PEN-FTで撮影し残した子供の頃の私を、大人になった私がOLYMPUS OM-D E-M1で複写しました。生前父とはほぼ分かり合えることもなくあまり愛情を受けて育ったとも実感していなかったのですが、私自身が写真を撮るようになりひとを撮る難しさをようやく感じた頃、あらためて父の写真を見返しその中に向けられたあたたかいまなざしに気付きました。そのアラバスターの部屋の中で私自身の過去の記憶を葬り去るとともに時にはそっと取り出して眺めていたいと思い制作したものです。